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老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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今日は就寝誘導がスムーズに行き、午後9時に全員がとりあえず寝てくれた。九時半から小杉勘助さんと二人でボクシングのタイトルマッチを見る。小杉さんは耳がひどく遠いのだが、補聴器を持っていないので、小杉さんとの会話はむずかしい。おまけに小便をときどき漏らしたり、意味不明の事を言ったりするので、他の介護職員は皆、小杉さんの事を相当ボケていると思っている。その小杉さんが、15ラウンド終わった後につぶやいた。

ドロウだ。」

私はこのとき、小杉さんはボケていないと確信した。
前まえから小杉さんに関しては、医師や他の職員が言うような認知症はない、または認知症とは言えない、と思っていた私だ。
 「ドロウ」という結論を出すためには、一時間以上も続く試合の場面場面を頭の中に記憶し、最後にそれらを比較・考察すると言う脳内の活動が必要だ。
多少ボケている人でも考察は可能だと思うが、「過去一時間にわたる詳細な記憶をもとに」というところが難しい。
それを小杉さんはやっているのだ。
 
 
    かくして試合結果は小杉さんの言うとおり、「ドロウ」であった。
選手は両者とも黒人であったのだが、「韓国人は強えーな」と言っていたのは、多分、私に対してのジョーク(又はボケたふり)だと思う。
   時々、わけのわからない夢物語のようなことを話してくる小杉さんだが、あまりに高度なジョーク(演技)のため、目の前の仕事しか眼中にない職員には「だいぶボケが進んでる」と言われる。そう私は思っている。
 この小杉さんの「ボケ疑惑」についてはまた日を改めて検証してゆきたい。
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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
64
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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