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老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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  午前8時15分、昼の部の女性介護員が出勤して来る。2級ヘルパーの本田さんと介護福祉士の斉藤さんだ。どちらも家族持ち子持ちのおっかさん介護員である。
食堂の隅で朝からなにか話し込んでいる。身振り手振りで斉藤さんが興奮しながらしゃべっている。

「本ちゃん聞いてぇ~、きのう坂井さんたら、また浴槽で便、出したんだからぁ~」

入居者の坂井さんは、脳梗塞の後遺症で半身が不自由な82歳の男性だ。杖と車椅子で日常生活をなんとかこなしているのは立派だが、神経質で、口うるさいのが玉に瑕だ。私は好奇心から二人の話に割り込んだ。

私   「ねえ、斉藤さん、坂井さんがお湯の中でうんこしたってこと?」
斉藤 「そうなの、まだあとに入る人もいるのに、下痢みたいな便がぶわ
          ~って浮いてきたの」
私      「さっき、「また」って言ってたよね、前にもしたことあるの?」
斉藤 「3日前の入浴の時もなの。もお、2回も連続なのよ。お湯、全部抜
          いて、浴槽洗って、またお湯入れて、全員の入浴が
終わったのが
          5時よ、もうやってらんない!」
私   「坂井さんはどうしてお湯につかるとうんこするの?」

横にいた本田介護員が待ってましたとばかりに説明する。

本田 「体の神経、おかしくなってるのよ。脳梗塞の後遺症とかもあるから
     肛門も開いちゃってるのよ」

 科学的な説明とは程遠いとは思ったものの、うんうんと相槌を打つ。3人そろってうんうんとうなずき合う。ホームの浴室は一度に8人が入れる大きさだ、なので、浴槽もそれなりにでかい。その浴槽で大便をする人がいるとは、夜勤も大変だが、昼は昼でけっこう大変なのだ。

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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
64
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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