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老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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  出勤すると久しぶりに園田すずさんがショートステイで来ていた。園田さんは90歳になる方なのだが、この年代の方にしては長身の女性だ。ぼかしの入ったサングラスをかけていて、脚が長いのだが、腰は90度くらいに曲がっていて、杖をつきながら歩く。若いときは女優の野際陽子さんの様ではなかったかと想像する。午後8時頃、食堂横の寝室へご案内する。園田さんは非常に気位の高い方なので、こちらの対応の仕方がまずいとすぐに機嫌が悪くなる。私は園田さんの場合だけは一流ホテルのフロントマンのように演技をするようにしている。
ベッドや照明をチェックしながら、園田さんが尋ねた。

園田 「今日は私、一人でここに寝ますの?」
私   「はい、さようでございます」
園田 「電気を消したら真っ暗ですし、慣れない所で不安ですわ」
私   「この部屋を出たすぐの所で、私が寝ずにお守りしています
      ので、どうかご安心を」

少し間をおいて、 

園田 「あなた、よかったらこの部屋で一緒に寝てくださらない?」
私   「あ、えっ? 私が・・ですか?」
園田 「別に同じ布団でなくてもいいのよ。年も離れているし、間違
           いを起こすこともないでしょう」

  園田さんと間違いを起こすような事があったら、私はもう、人間をやめねばなるまい。移動式ベッドを持ち込んで園田さんの2メートル隣に寝た。
今日は花の金曜日、うら若き女性と夜を共にする男性も多いことだろう。
私は自分の不遇を呪った。

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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
64
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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