老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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室田鉄二さんが熱を出した。38~39度を行き来している。室田さんは、小柄だが、胸板の厚い骨太の男性だ。ひところは徘徊が激しく、室田さんに関するハプニングは枚挙にいとまがなかったのだが、最近はほんとに体が弱り、そのうち寝たきりになるのではと心配されている。
今夜は森ホーム長から、特に注意して様子を見るよう言われている。
午前2時、午前4時と携帯電話のアラームを設定して、午前0時に仮眠に入った。
ふと目をさまして時計を見る。午前5時・・・、「しまった!寝過ごした!」
急いで室田さんの様子を見にゆく。目を半開きにして、口を大きく開いている。もしやと思い室田さんの口元に自分の頬を近づけて呼吸を確認する。
「し、死んでる!!」
驚いて、体全身を見渡した。そして、肌に触れてみた
「冷たい!!」
まずは、救急車か、それともホーム長に連絡か、私の責任問題は・・などいろいろな考えが、頭を駆け巡った。
さらに、わたしは両手の人指し指と親指で、室田さんの鼻と口をつまんでみた。息をしているかどうかさらに確かめたかったのだ。次の瞬間、
「うぐっ、ぶすしゅっ」室田さんが息を吹き返した。というより、死んでなかった。
熱も下がり、ぐっすり寝ていたようだ。わたしの早合点である。さすがに私の夜勤日に死んでもらっては、私も今後の寝覚めが悪いといううものだ。まずはありがとう、室田さん。良くぞ私のために生きててくれました。
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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
64
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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