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老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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1.jpg いまは夜の8時、今日の夜は何か嫌な予感がする。要介護4稲垣清さんが今日の日中、下剤を飲んだというのだ。5日ほど大便が出ていないらしく、昼の職員が言うのには、「下剤を飲んでもらったので、今晩か明日には出るのではないか」との事だったからである。稲垣さんは、認知症が相当重く、独り言を常にしゃべっているのであるが、会話は成立せず、大小便も垂れ流し状態だ。だから、ちょっと高価だが、一番性能の良い紙オムツを装着してもらっている。
 だが私の予感は杞憂に終わったようで、稲垣さんを含めて全員が10時までには寝てくれて、私も見廻りを終えて0時に仮眠をとろうとしたそのとき、寝室ドアのところに立っている稲垣さんを発見した。
「稲垣さん、寝むれないんですか?さ、一緒にベッドへ行きましょう」
といって手を握った瞬間、「ぐにゅ」といった感触。《!!!!!》  
恐るおそる手の臭いを嗅ぐ・・・《う、うんこだ~~》
なぜか稲垣さんは微笑んでいる。
 
 さんざんの思いで処理をして、やっとの思いで寝かしつける。
どうやら、オムツの中で排便した後、手を突っ込んで、大便をつかみ出したらしい。壁の手すりや、ドアのノブもうんこまみれだった。稲垣さんの手の爪のなかまで大便が入り込んでいた。
 手すりに付着した大便をふき取りながら、急に情けない気持ちが襲ってくる。華やかだったビジネスマン時代のことや家族のことが次々に頭に浮かんでは消えた。涙が頬をつたう。《なんでオレがこんな事を・・・》 その晩は布団のなかで声を出して泣いた。
 

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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
63
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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