老人ホームの夜勤専門要員として、たった一人雇われた私(男46歳)。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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「あんたさん、ちょっとこっち来なさい!」
犬山さんは80歳近い小柄な女性だ、目はまだ生き生きとしている。
私は配膳準備で忙しかったのだが、「どうしたの?」と言って顔を向けた。
「いいから早く来なさいっての!!」
犬山さんは怒っているわけではないのだが、常に怒り口調だ。ああ、またか・・と思いながら忙しい手を休めて犬山さんの部屋までついていく。部屋の中から犬山さんが菓子パンを持ってきた。
「いいから早く食べなさいって!見つからないように、早く食べてしまいなさいっての」
「いつも悪いね、ありがとう」と私。遠慮してもいつも押し問答になるので、最近は素直に受け取るようにしている。
食堂に戻って、もらったパンの日付を見る・・・賞味期限が約1ヶカ月前に過ぎていた。しかも袋があいていて4個入りのうち2個の食べ残しが入っていた。確かこの手のパンの賞味期限は店頭に並んでから3~4日くらいのものだ。それが1ヶ月前の食べ残し・・・。私は心の中でつぶやいた「犬山さん、悪いけど今回も捨てるよ・・。」
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★ プロフィール
HN:
井森 勝男
年齢:
64
性別:
男性
誕生日:
1960/05/05
職業:
夜間専門の介護職員
自己紹介:
某著名企業の総合職であったがほんの些細なことから退職、現在は年収150万で老人ホームの介護職員(夜間専門のパートタイマー)として働いている。認知症老人たちと私の、夜ごと繰り返される狂乱の宴。仕事でなければ決して近寄りたくないこの現実。介護する側、される側の悲哀。きれいごとの通用しないこの館で、今夜も私は試される。
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